1998/12/25−愛知−名古屋ボトムライン |
12月25日土曜日。 地下鉄今池駅の出口から地上に抜けると、開場を待ちわびる人の群れが目に飛び込んできました。顔見知りの声がしてすぐその輪の中へ。夕暮れの迫る名古屋の街。思っていたよりもあたたかい気がしました。前方に並ぶペアシートの人たちを少しうらやましい気持ちでみながら順番を待つ時間がとても長く感じられました。 重いコートをロッカーに預け、ワインを傾けつつ他の会場でのLIVEに行かれた方の話などきいているうちにみなさんが席につく気配がして幸運にも座れた最前列の席に移動しました。 クリスマスの夜にふさわしく「THE CHRISTMAS SONG」でコンサートが始まりました。純子さんは黒のホルターネックのコスチューム。こういう肌のあらわな服を日本人が着ると、見る人だけでなく着ている本人も気にしてしまったりしてどこか隠微な雰囲気に陥りがちなもの(?)ですが、欧米の女性は”夜会服”としてこういう衣装を着ることに慣れているせいか、見ていてもいやらしさがないのですね。さすが!という感じの堂々とした着こなしでした。 短いあいさつの後、「カシミアのほほえみ」と「愛の炎〜THE FLAMEOF LOVE」の2曲が続きます。親子、家族とかいろんな愛があるけれど世の中にあふれている歌はやはり男と女の愛が多い・・・といった内容のmc。”恋人や家族に隠れてコンサートに行くのではなく、カップルの人にきいてほしい。”とも言われ、ペアシートのオーディエンスに向けて”彼と彼女のどちらが誘って今日来たの?”などとアンケートもとっておられました(笑)。 「歌を作り続けてこそアーティスト、歌い続けてこそシンガー」というコメントの後、純子さんの歌のメイキングそのものを歌った「Love In The Key Of ”J”」へ。そして2つの新曲「BLUE MOON」「LITTLE HEAVEN」を。今年夏のコンサートに行けなかった私にとってはどちらも初めて聴く曲でしたが、やさしく自然なうたの言葉と、特に「LITTLE HEAVEN」のまるで南の島にいるようなおおらかさがしみてくるのでした。 その余韻もさめないうちにドラマーが前に出ていたアフリカのドラム(名称を言われたのですが忘れてしまいました。ごめんなさい!)にスタンバイ。ギタリストはギターをアコースティックに切り替えます。ここで、純子さんが学校に通っていた時の情景を細かに語り出しました。これぞ地元、名古屋ならではのmc。市内からみえたという、私の近くにいた男性はニコニコしてうなずきをくりかえしていました。その道中でできた曲、メジャーデビューとなった「思い出は美しすぎて」。続けてこの演奏スタイルにぴったりな「鳳仙花」。しっとりとした純子さんの歌声と快いリズムに身をまかせる気持ちよさの中でギタリストの手元やなんともいえない(^^)ドラマーの全身の表情を、純子さんの姿と重ねて楽しませてもらいました。 |
=アンコール= E1. JINGLE BELL E2. I'll Be Home For Christmas |
初めてきいてもすぐにそのサビを歌いたくなってしまうくらいキャッチーなメロディの「Ai no Survivor」と「Mr. ブルー〜私の地球〜」。作られた時期には20年ほどの差がありますがいずれにも流れているテーマは普遍のもの。未来をになっていく子供やその先の世代のために身近なところからものを大切にしなくては・・・というメッセージとからめて”マクドナルドのケチャップやナプキンを持って帰る話”などが出て客席の笑いを誘っていました。 次の「キャプティベーション」で純子さんはお色直しのため(笑)退場。前年のクリスマスコンサートの際のちょっとぎこちなさの残るバンド(失礼!)と違い、今年は”余裕のプロ集団”という感じのバンド。退場中も巧みな演奏で私たちを退屈させることがなく、自然に拍手をおくってしまいました。・・・やがて、ヒョウ柄のドレスに身をつつみ現れたのは、来日中のアメリカの女性シンガーJune Stanley!!とでも紹介したいような艶姿。歌われたのはMicheal White氏のアルバムに収録予定の「Drunk on Love」。サウンド、ヴォーカル、そして歌う姿、どれをとってもカッコ良すぎ!そんな彼女に惚れ直した方も少なくないはず(全員だったりして)。 いよいよLIVEはクライマックスを迎えます。バンドのメンバーが紹介され、全員がステージ前方に集合。なんとアカペラ(無伴奏コーラス)で、ヘンリー・マンシーニの名曲「MOON RIVER」を。この曲、前夜コンサートの行われた神戸で練習されたものだとか。そしてクリスマスのスタンダード中のスタンダード、「SILENT NIGHT」を。 かつて私がよく見に行ったとあるバンドのコンサートで必ず行われていた中盤のアカペラのコーナー。これは彼らのLIVEでの”売り”にもなっており、綿密に計画され練習されて聴衆に届けられたものでした。そういった趣向とは違って今回のメンバーでのこの2曲はもともと計画されたものではなく、自然発生的にメニューに持ち込まれたもののようです。多少出だしにつまづいたり、といったところもご愛敬(でもすぐ立て直されたハーモニーはさすがでした)。たとえるならばオーヴンから出たてのホームメイドのクッキーみたいなざっくりとしたあたたかさ。私たちにとっては”思いがけないクリスマスプレゼント”となりました。 コーラス好きの私、思い余って”もっとー”などとおねだりしてしまったのですがあっさり純子さんに却下され、 ”やはり、私のLIVEですから。”と「みずいろの雨」、「Stay Gold」と2曲、ノリのよいナンバーを。そして、GTSとのコラボレーションにて今年発表された「DISTANT MEMORIES」を”この曲、おぼえてる?♪愛しているーのーなら〜愛していーるとーぉぉー”と軽く口ずさんでからスタートさせたのでした。となりの男性2人もすごーく立ちたそうにしていたようですが、気恥ずかしさが先に立ったか、それとも後の人への心づかいからか、着席のまま身体でリズムをとるにとどまりました(後で聞いたら、踊るために最初から後ろのほうで立見していた方もいたとか・・・)。 この日が今回のツアーの最終日とあって、純子さんの口から何度となく”バンドも私も今日はピークを迎えている”という言葉が出て来ていました。また目の前でノリまくっていた私のようなオーディエンスを目にされたからでしょうか(?)、”もしかしたらあなたたちも(ピークを迎えている)・・・”とも。”このままずーっと歌っていられそうな気分だけどあと2曲。”ということで美しいメロディのバラード「ANOTHER PAGE」と(本編の)最後は「BROTHER & SISTER」。♪あしたもあなたにコバルトの星空を・・・仰ぎ見た純子さんの姿の真上にほんとうに星いっぱいの夜空が広がるような心地がして、思わずその空を右手でなぞってしまったのでした(我に返れば、ああなんて恥ずかしい。苦笑)。 アンコールはまたクリスマスらしい、「JINGLE BELLS」と「I'll Be Home For Christmas」で締められました。 2年前の同じ会場でのLIVEを見た友人から「名古屋のは絶対見るべきですよ。ほか(の会場)と違ってアットホームな雰囲気でとてもいいから」と再三言われており、今回やっと見ることがかないました。 純子さん自身も心なしかとてもリラックスされているようでしたし、またバンドのメンバーとも”一緒に仲良く、演奏すること自体を楽しんでいる”様子がこちらにも伝わってきてすごくあったかい気持ちになれた、そんなコンサートでした。 殺伐としたニュースが目につき、心が痛いような感覚さえ覚えた1999年の終わりに、彼女の生のステージに触れその歌声に心をいやすことのできる私はほんとうに幸せ者。また、”八神純子さんの歌を聴きたい”という思いだけで出会うことになったたくさんの人たちとコンサートの前の期待の中で、そしてその後の余韻の中で楽しく語らえたことがとてもうれしく思われました。 |
![]() |